■2016年度(第2回)北海道考古学会学会賞・奨励賞 受賞者

学会賞 菊池俊彦氏

【受賞理由】菊池俊彦氏は考古学・東洋史学の立場からオホーツク文化の起源やアムール河中・上流域の諸文化との比較研究に多大の貢献をされた。氏の研究目的は,環オホーツク海周辺域の古代諸文化の解明と相互関係を追求することにあり,北海道に出現したオホーツク文化やアイヌ文化を従来にない視点から位置づけられた。1995年には長年の研究成果を『北東アジア古代文化の研究』(北大図書刊行会)として上梓(第10回濱田青陵賞受賞)され,名実ともに列島北部地域と北東アジアの関係史の第一人者として,その地位を確たるものとされた。その後も『環オホーツク海古代文化の研究』(北大図書刊行会2004)、『オホーツクの古代史』(平凡社2009)を著された。北大を定年退職された現在も論文等の執筆、講演等に活躍されている。 また、1967~1979年の12年の長きにわたり、大場利夫初代会長のもとで北海道考古学会の事務局を一手に引き受け、設立間もない学会の運営に多大な貢献をされた。

 

奨励賞 松田宏介氏

【受賞理由】松田宏介氏は、続縄文文化期を主な研究対象としている。氏の研究の特色は、資料の緻密で地道な分析と理論的な議論の展開にある。豊浦町礼文華貝塚・小幌洞窟・江別市旧町村農場・えりも町東歌別など続縄文文化期の基準土器資料に今日的な再検討と精緻な資料提示を行い、学界に貢献されている。その一方、先行研究に緻密な分析を加え、従前認識されていなかった枠組みや視点について刺激的な議論を展開してきた。また同時期の北海道外の様相も視野に入れ、今後の研究の方向性を提示し、続縄文期の土器研究における議論をリードしてきた。学位論文「続縄文期における土器型式圏の変動とその背景」で2008年に北海道大学から博士号を授与された後も、室蘭市教育委員会に勤務するかたわら地道な研究活動を継続しており、更なる研究の進展が大いに期待される。