北海道考古学会だより 64号


北海道考古学会だより 64号 目次 


     報告会   1999年度北海道考古学会遺跡報告会の案内
     事業報告  1999年度遺跡見学会実施報告
     事務連絡  新入会員・住所変更会員のお知らせ
     会誌    『北海道考古学』第36輯の原稿募集について
     研究会 北海道考古学会定例研究会の実施報告と次回開催および発表者募集の案内
     案内  北海道立埋蔵文化財センター開館のお知らせ

1999年度北海道考古学会遺跡報告会のご案内
 毎年恒例となりました遺跡報告会を今年も開催いたします。例年通り、道内各地域で調査された遺跡について、地域ごとの概況と各遺跡のスライドによる報告という形式で、全道的に網羅した内容となっております。
 今年は、札幌市内の遺跡、恵庭市カリンバ3遺跡、石狩市紅葉山49号遺跡、平取町亜別遺跡、えりも町油駒遺跡、新十津川町総進不動坂遺跡、枝幸町ウバトマナイチャシ、上ノ国町勝山館遺跡、木古内町泉沢2遺跡、常呂町トコロチャシなどの報告が予定されており、あわせて各地区の概況が5本、報告遺跡が10件を予定しています。年末という大変お忙しい時期ではございますが、奮ってご参加いただけますようお待ち申し上げております。昼食は特に斡旋いたしませんので、各人にて準備下さるようお願いいたします。
 また、会終了後にはこちらも恒例となりました忘年会(当日連絡)も予定しておりますので、そちらの方の参加もよろしくお願いいたします。

  日時:1999年12月18日(土)午前9:30受付開始(10:00から報告)~午後5:20

  場所:かでる2・7 4F 大会議室 札幌市中央区北2条西7丁目 TEL011-275-5527

  費用:1,000円(資料代)

  内容:道央地区の概況1と事例報告  札幌市内の遺跡・カリンバ3遺跡・紅葉山49号遺跡

     道央地区の概況2と事例報告  亜別遺跡・油駒遺跡


    道北地区の概況と事例報告    総進不動坂遺跡・ウバトマナイチャシ


   道南地区の概況と事例報告    勝山館遺跡・泉沢2遺跡


    道東地区の概況1・2と事例報告 トコロチャシ


※報告遺跡は全て予定です。諸事情により変更等あるかもしれませんが、ご容赦願います。

           報告会担当(高橋・長崎)

 

 

1999年度北海道考古学会遺跡見学会実施報告
 実施日 1999年8月28日(土) 晴れ
 参加人数 86名(添乗員3名)
 見学コース 札幌駅西口ヨドバシカメラ前および千歳駅裏(集合)→赤井川村土木沢入口→赤井川村都遺跡→       赤井川村日の出遺跡→余市町ニッカウイスキーレストラン(昼食)→余市町入舟遺跡→余市町大川       遺跡→余市町フゴッペ洞窟→余市町西崎山ストーンサークル→小樽市忍路環状列石→札幌駅西口および千歳駅裏(解散)
 今年は、黒曜石の原産地として知られる赤井川村において発掘調査が行われることもあり、見学コースは余市・赤井川方面で決定した。赤井川村を訪れるにあたっては、黒曜石原石の採取地点を見学コースの一つに含めることを検討したが、大型バスの入れるような場所ではないこともあって、林道の入口までを見学することになった。そこで、原産地の見学については、あらかじめ見学コースを下見でまわった吉田委員が、(財)北海道埋蔵文化財センター佐川俊一調査課長と同行し、実際に4キロほど山の中に入って黒曜石の原石が転がっている様を写真に収め、吉田委員の説明とこれらの写真により参加者の方々には生々しい雰囲気を味わっていただく様演出した。
 当日は、絶好の好天気に恵まれ、見学会の成功を暗示しているようだった。バスは札幌駅西口ヨドバシカメラ前から定刻の9:00に千歳駅裏から定刻の8:40にそれぞれ出発し、札樽道の金山パーキングエリアで合流した。その後、朝里インターチェンジで高速道路を降り、国道393号線に乗り換え一路赤井川村へと向かった。途中毛無峠では小樽市街および石狩湾を一望し、観光気分さながら黒曜石原石を採取した土木沢の林道入り口へと到着した。

 赤井川村土木沢の林道入り口は、赤井川村の中心部から南側の曲川に位置する。土木沢は、二ツ森山の北東側の裾野あたりから流れ出て余市川へと合流する沢で、隣接する仁木町との町境になっている。実際に黒曜石原石採取地点へと行って来た吉田委員によれば、この土木沢伝いに上流まであがりきり、さらに奥深く入っていった斜面上に、黒曜石の原石が点在しているということであった。黒曜石の大きさは区々であったらしいが、大きいものでは直径50センチ程度のものもみられたようである。見学者は、これらの説明を聞きながら、林道の奥を眺め、または資料集に貼付された写真を見ながら、黒曜石の原石が転がっている様を十分に想像できたように見受けられた。
 赤井川村都遺跡は、曲川と余市川を挟んだ北側、丘陵の斜面上に位置する。調査は(財)北海道埋蔵文化財センターによって行われており、旧石器時代から縄文時代の石器および剥片類。他に少量ではあるが縄文土器も出土している。見学者が総勢86名いたことから、現場見学と整理事務所内での遺物見学とに分かれて、交代で見学することとなった。現場では、佐川俊一調査課長により、周囲の環境や調査の状況などをご説明いただいた。また、日程が押し迫る中、この日のためにブロックで出土した石器群を取り上げないで、そのままの状態で見学できるようご配慮いただいた。見学者の中には、現場の状況もさることながらこうした配慮に感謝する者も見受けられた。なお、ブロックはすべて黒曜石製の剥片が集中するものであり、赤井川産の黒曜石特有の球果を多量に含むものであった。整理事務所では、中田裕香調査主任により、わかりやすく解説していただいた。縄文時代の鏃やスクレイパーなどの石器群や旧石器時代の細石刃および細石刃核などの黒曜石製の石器群に、多くの見学者が我先にと群がっていた。この他に黒曜石製ではない石器や縄文土器も若干出土していた。
 赤井川村日の出遺跡は、表土を除去している最中であったため、車中からの見学となった。遺跡は赤井川村の中心部から北側に位置し、発掘調査のために迂回用道路をつくっての大規模なものとなっていた。表土の下には、黒色土層が確認できた。
 赤井川村から冷水峠を抜け、余市町に入りニッカウイスキーレストランで昼食となった。昼食後は2階の試飲コーナーで軽く一杯引っ掛ける方、本格的にいただく方、お土産などを買っている方などが見受けられた。また、ニッカウイスキーの博物館では、カウンターバーが用意されており、樽出しのウイスキーが堪能できるようになっていた。
 余市町入舟遺跡は、現場の見学は周辺工事の関係で難しいということもあり、大川遺跡の整理事務所の中で、入舟・大川遺跡の出土遺物を見せていただくこととなった。事務所では、余市町教育委員会の乾芳弘氏、余市町大川遺跡整理事務所の宮宏明調査員のお二方から、熱の入った解説を受け、多くの学術的な価値の高い遺物を目の前にして、大変熱心に見学する方々が多く見受けられた。
 余市町フゴッペ洞窟は、見学者のほとんどがその存在は知っていながらも、 実際に来たことのある人は少ないということで、バス車内での期待度はかなり高いものであった。施設がそれほど大きくないため、人数を半分ずつに分けての入場となった。ここでも余市町の乾さんの解説があり、壁に描かれた彫刻画をじっくりと見学していた。やがて話題が、施設の老朽化と壁画の保存の方に傾き、今後の町の対応に関心が高まった。なお、洞窟裏の踏切には、古代文字踏切と名付けられており、JRの粋なはからいが感じとられた。
 西崎山ストーンサークルは、小樽仁木町を結ぶ北後志東部広域農道、通称フルーツ街道沿いに位置している。ここは近年整備され駐車場および階段が敷設されたが、駐車場まで行く連絡道路が急な坂でしかもカーブがきついため、大型バスがそこまで入れるかが問題となった。そこで見学者がフゴッペ洞窟を見学している間にバスの運転手が、乾さんと下見に行くという一幕があった。結果的にバスは無事に連絡道路を走り抜け、見学者は階段を上がっての見学となった。非常に長く、急な階段で、見学者の多くが息を切らせていたが、大きな礫がサークル状に配石された状況を見て、疲れも飛んでしまったようであった。ここでも乾さんの解説があり、熱心に聞き入る見学者が多数みられた。また、ここからは、余市にシリパ山が一望でき、絶景の眺めにしばし足を止める者も多かった。
 小樽市忍路環状列石は、今回の予定ではコースには入れてなかったが、時間的に余裕ができたので急遽見学することとなった。場所は同じくフルーツ街道沿いに位置しており、街道沿いに大型バスを2台停めての見学となった。途中、モチヤ沢川の橋のたもとに縄文人をモチーフにした欄干が造られており、小樽市および工事関係者の粋な計らいが感じ取られた。忍路環状列石では、まずその広さと石の大きさに圧倒されていたようであった。ここでも乾さんに解説をしていただき、これが遙か古代の縄文時代に作られたことに、多くの見学者が驚きの声を上げていた。
 今回は、下準備も含めて、昨年の反省を生かして実施できたものと思っております。また、遺跡見学会の実施にあたり、様々な面でご尽力いただきました(財)北海道埋蔵文化財センター、余市町教育委員会には厚く御礼申し上げます。また忍路環状列石の見学の際には、通行中の方々および付近住民の方々には大変ご迷惑をおかけいたしました。この場を借りてお詫び申し上げます。また、北都交通の運転手およびバスガイドの方々には交通整理の役を買っていただきました。深く感謝申し上げます。
 次年度以降もこの企画は続く予定ですので、遺跡見学会に関するご意見・ご要望などありましたら実行委員にお知らせください。           見学会担当(松谷・吉田)

新入会員・住所変更会員のお知らせ(略)

 

『北海道考古学』第36輯の原稿募集について

 だより63号でお知らせしましたとおり、次回『北海道考古学』第36輯は特集号を予定しております。テーマは「完新世北海道の生業」です。また、テーマ論文並びにテーマ以外の一般論文も、同時に募集しております。会員のみなさまのご投稿をお待ちしております。
1 投稿資格
 「投稿について」(1997年11月15日発行の『北海道考古学会だより』第58号に掲載)の定めにより、本会会員の資格を持って投稿資格とします。
2 原稿のテ-マ・種類・分量・体裁
 「投稿について」および「原稿の体裁について」(『同』第58号に掲載)の定めによります。キーワードの掲載にご協力ください。
3 送付
 原稿は「投稿について」1の規定に従い、編集委員会事務所あて郵送して下さい。編集の都合上、正本のほかに写し1部(図表含む、図表はA4版に縮小コピーしたもの)を添えてくださるようお願いします。編集委員会事務局の住所は下記の通りです。
   〒060-0810
    北海道札幌市北区北10条西7丁目北海道大学文学部
    北方文化論講座 小杉 康気付
4 締切
 2000年1月31日までに編集委員会事務所に到着したものを掲載対象とします。
 尚、編集の都合上、投稿・掲載希望者はその旨を11月末までに編集委員会へ予めお知らせ下さい。
5 問合せ・資料請求
 編集の庶務に関するお問い合わせ、「投稿について」・「原稿について」等の資料請求は編集委員会事務局までご連絡下さい。      会誌担当(林・小杉)

北海道考古学会定例研究会の実施報告と次回開催および発表者募集の案内
 去る平成11年9月11日(土)午後5時から、札幌学院大学A棟4階会議室におきまして、(財)日本私学教育研究所客員研究員の福岡イト子会員より、『研究上の問題点から「考古学とアイヌ語地名-遺跡命名に関わって-」』と題して、「考古学とアイヌ語地名」や「遺跡とアイヌ語地名との整合性」などのテーマをもとに、アイヌ語地名の考古学上の取り扱いについて多数の問題点が提起された。
 当日は、活発な意見交換がなされ、アイヌ語地名の研究者と考古学者との相互乗り入れにより、これらの問題点の多くが、解消されていくのであろうということでまとまった。
 また、平成11年11月6日(土)午後5時30分から、同じく札幌学院大学A棟2階会議室におきまして、福島大学の工藤雅樹会員より、『北日本の考古学-古代の蝦夷とアイヌ-』についてご発表いただいた。先生の個人史を振り返るような形で、古代における蝦夷の諸問題が提示され、最後は、東北北部においては、北海道の縄文人の子孫と共通する歴史と文化を担った人々が、7世紀の後半以降稲作を行い、政府側の影響を受けて日本文化の担い手となり日本民族化したという現在の先生の考え方で締めくくられた。また、現在調査中の防御性集落や関連遺跡の写真が紹介された。
 次回研究会は、平成12年2月5日(土)午後5時から、札幌学院大学A棟4階会議室において、(財)北海道埋蔵文化財センター職員により、『キウス4遺跡の調査成果』(仮題)が発表される予定になっております。奮ってご参加いただけますようお願い申し上げます。
 なお,北海道考古学会定例研究会では発表者を募集しております。発表希望の会員の方おりましたら事務局までお問い合わせ下さい。
 また、来年度の研究大会の開催地についても検討しております。開催地の要望や研究大会テーマについて個人的なご意見でも結構でございますので、ご遠慮なく北海道考古学会事務局までご一報いただけますようお待ち申し上げております。      研究会担当 (田口・手塚・深澤・藤井)
北海道立埋蔵文化財センター開館のお知らせ
 すでにご承知の方もいらっしゃるかと思いますが、平成11年11月11日(木)午後1時、北海道立埋蔵文化財センターがオープンいたしました。中には展示室も用意され、これまでの調査成果が展示され、充実した内容になっており、他に図書閲覧室もございます。この機会に是非足をお運び下さい。
 住 所 〒069-0832 江別市西野幌685-1
TEL (011)386-3231/FAX (011)386-3238
開館時間 9:30~16:30/休館日 月曜日・祝日・年末年始
入館料 無料
 交通 JR「=「大麻」から、徒歩約20分
    新札幌バスターミナル発 JRバス・夕鉄バス(文京通西循環線)「くりの木公園前」下車、徒歩5分
    新札幌バスターミナル発 JRバス・夕鉄バス(江別方面行き)「道女子大札学院大前」下車、徒歩15分
 
 
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