北海道考古学会だより 67号


北海道考古学会だより 67号 目次 

報告会   2000年度北海道考古学会遺跡報告会の案内
     事業報告  2000年度遺跡見学会実施報告
     会誌    『北海道考古学』第37輯の特集テーマおよび原稿募集について
     事務連絡  新入会員・住所変更会員のお知らせ
          北海道考古学会企画遺跡めぐりツアー中止のお知らせ
     研究会 北海道考古学会定例研究会からのお知らせ
     案内    北海道開拓記念館第50回特別展のご案内

2000年度北海道考古学会遺跡報告会のご案内
 毎年恒例となっております遺跡報告会ですが、今年も例年通り開催いたします。地域ごとの概況報告と道内各地域で調査された遺跡について,スライドを中心に報告していただく予定です。今年は、各地域の概況報告(道央1・道央2・道北・道南・道東1・道東2)と各遺跡の報告を10件予定しています。
 年末という大変お忙しい時期ではございますが、奮ってご参加いただけますようお待ち申し上げております。昼食は特に斡旋いたしませんので、各人にて準備下さるようお願いいたします。
 また、会終了後には報告者を交えての忘年会(当日連絡)も予定しておりますので、そちらの方への参加もよろしくお願いいたします。
  日時:2000年12月 日(土) 
     午前9:30受付開始(10:00から報告)~午後5:20
  場所:北海道大学学術交流会館 小ホール
       札幌市北区北8条西5丁目
  費用:1,000円(資料代)
  内容:道央地区の概況1と事例報告  
     道央地区の概況2と事例報告  
    道北地区の概況と事例報告    
   道南地区の概況と事例報告    
    道東地区の概況1・2と事例報告 
※報告遺跡は検討中ですが,今年度話題になった遺跡が報告される予定です。
           報告会担当(高橋・長崎)

 

 

2000年度北海道考古学会遺跡見学会実施報告
実施日  8月26日(土) 雨のち曇り
参加人数 75名
集合場所 札幌・全日空札幌駅前支店ロビー(中央区北4西5伊藤 加藤ビルディング1F) 集合8:00
恵庭・JR恵庭駅東口 集合9:00
見学コース 札幌・全日空札幌駅前支店ロビーおよび恵庭・JR恵庭駅東口(集合)→◎恵庭市カリンバ1+カリンバ3遺跡→◎恵庭市埋文整理室(カリンバ3資料)見学→◎恵庭市西島松5遺跡→◎千歳市史跡ウサクマイ遺跡群→千歳市ウサクマイN遺跡→昼食(名水ふれあい公園)→◎鵡川町宮戸3遺跡→◎平取町沙流川歴史館・アイヌ文化博物館→平取町ユオイチャシ跡→恵庭・札幌(17時過ぎ解散)
 今年は、昨年から新聞等で話題となったカリンバ3遺跡や刀が副葬された墓壙が続々と検出され話題となっていた西島松5遺跡の見学を中心に,日高道の一部開通や鵡川町での発掘調査なども視野に入れ,恵庭・千歳から日高道経由で鵡川町を見学し,平取町の沙流川歴史館・アイヌ文化博物館を最終目的地とするルートを計画した。事前に各市町教育委員会からの了承を得,実際に予定ルートを確認し,幾つかの遺跡および関連施設を組み込み,担当委員により最終ルートが決定され,委員会で承認が得られた。
 当日は生憎の大雨となり,ここ数年来実施した遺跡見学会としては最悪のコンディションとなった。天候が悪いことから欠席者が多数出るものと予想されたが、ほとんどの参加者が集合時間どおりに集合し,企画運営側としてはこの上ない喜びであった。今回もバス2台を使っての見学会であり、1台は札幌発、もう1台は恵庭発のバスで、恵庭駅東口で合流する計画であった。
 大雨の中、札幌からほぼ定刻通りに恵庭発のバスと待ち合わせとなる恵庭駅東口へと出発した。天候が悪く見晴らしはあまり良くなかったが,道央道からは建設中の札幌ドーム(ひろば)の銀色の屋根が確認できた。恵庭市内に入ると雨は若干小降りになり、天気が徐々に回復しているように感じ取られ、参加者も一安心といったところであった。恵庭駅東口で、2台のバスは合流し、最初の見学地となるカリンバ1遺跡へと向かった。

 

 

配付資料など(図・写真)略

恵庭市カリンバ1遺跡は、恵庭駅の北側、カリンバイトコ川沿いに形成された遺跡で、縄文時代の住居跡や土壙、Tピットおよびアイヌ文化期の住居跡や倉庫跡が検出されている。調査は恵庭市教育委員会によって行われており、見学会担当委員の松谷純一調査員が現場を担当している。現場の進捗をこの日に合わせてきたことが随所に感じ取られ、雨の中の見学となったが、見学者の多くが松谷委員の説明に耳を傾けていた。特にアイヌ文化期の住居跡の見学では、柱穴の断面が見やすいように半裁した状況で残してあり、どのように調査が行われいるかを目の当たりにし、興味深く見学する見学者が多く見られた。
 恵庭市カリンバ3遺跡は、昨年縄文時代後期末の墓壙から多数の漆製品や玉類などが出土し、全国的にも話題となった遺跡である。調査は昨年で終了しており,今回の見学会では昨年度の調査地点を見学することとした。バスは、旧調査現場のあたりで停車し、歩いて縄文後期末の墓壙群が検出されたあたりまで移動した。発掘調査終了後に道路工事が行われ、立派な道路が敷設されたことから、ここにカリンバ3遺跡があったことは見る影もないが、見学者は遺跡が工事により姿が変わっていく様が見学でき、普段みられないものが見学できたと喜ぶものも見られた。
 恵庭市埋文整理室(カリンバ3遺跡資料)の見学では、室内の広さを考慮することと見学者にじっくり近くでみていただこうということで、バス1台ずつに分かれての見学となった。縄文後期の漆製品は保存処理などで見学できない状況であったが、柄付きの刀子や横櫛、鉄斧、ヒスイの玉など見学者の注目を集めるものが多数用意されていた。松谷委員の説明を受け、多くの見学者から質問の声が挙がっていた。また、別室ではこれまで調査されてきた遺跡の復元土器の一部が収蔵展示されていた。
 恵庭市西島松5遺跡は、続縄文時代から擦文時代にかけての墓壙群が検出され、副葬品として刀や鉄斧などが出土しており、刀では漆塗りの鞘が発見されている。調査は(財)北海道埋蔵文化財センターが行っており、現場では中山昭大調査員と石井淳平調査員がそれぞれバス1台ずつを引き受ける形で説明していただいた。今回の見学では、出土した遺物のうち刀などの脆弱遺物は残念ながら保存処理のために見学できない状況であったが、この見学会のためにいくつかの墓壙は調査を一時中断して残してあったため、刀が出土した状況を見学することが出来た。現場の進捗状況を見学会に合わせていただき,大変な配慮をしていただいた(財)北海道埋蔵文化財センターに対し、感謝申し上げたい。西島松5遺跡の見学をする段になって、雨の方は一層酷くなり、大変な豪雨となった。傘もあまり役に立たない状況で、見学者もさすがに厳しい状況となったが、二人の調査員の説明に引き込まれるように、遺跡の中を一巡し、無事に見学することが出来た。刀が埋葬されている状況や、屈葬と伸展葬の違いや今後の調査などについて、大変熱の入った説明で、見学者の多くは満足気であった。現場の見学後、プレハブ内では土器を中心に、発見された遺物も見学できた。豪雨の中の見学後、ほっとする一時となった。
 雨の中の見学となった恵庭市内の見学を無事終了し、バスは千歳方面へと向かった。千歳へ向かうにつれ、天気は徐々に回復し、千歳市内に入ったときには太陽の日差しも覗けるほど回復してきた。やがてバスは千歳市郊外にある国指定史跡ウサクマイ遺跡群へと続く道に入り、バスで入れる限界のところまで走ってもらい、そこからは徒歩で現地へと向かった。歩いて5分もするとウサクマイ遺跡群の看板などが確認できたが、身の丈以上のブッシュが生い茂っており、実際に遺跡群を見るにはそれをかき分けねばならず、合羽を装備していた見学者が数名中の方まで見学した以外は、担当委員の説明により遺跡の状況を把握するにとどまった。
 千歳市ウサクマイN遺跡は、昨年(財)北海道埋蔵文化財センターで調査され、皇朝十二銭の一つである「富壽神寶」やオホーツク式土器が発見され話題となった遺跡で、調査区は昼食場所となる名水ふれあい公園の真向かいにあたる。本州や道東北との交流があったことについて、松谷・吉田両委員から説明があり、1,000年以上も前のこの地にあった出来事に、多くの参加者が驚きの声を上げていた。
 昼食は、名水ふれあい公園内でとることとなり、天気も良くなってきたことから外でピクニック気分を味わいながらとる参加者も見られた。また,公園内の名水を食後に試飲したり、水筒などにつめて持ち帰る参加者も多かった。
 午後は、道央道から開通したばかりの日高道を利用し鵡川町へと向かった。鵡川町では、(財)北海道埋蔵文化財センターが3地点(4遺跡)の調査を行っており、今回は調査がちょうど終了した鵡川町宮戸3遺跡を見学した。現場では大泰司統調査員が、体を使って説明をしていただいた。調査では32基のTピットが検出され、台地上に構築された遺構が非常に観察しやすい状況であった。参加者からは、縄文時代における食料の獲得方法などについて多くの質問が挙がり、野外授業さながらの見学となった。
 鵡川町を後にしたバスは、最終目的地となる平取町を目指して、さらに南下した。平取町では、沙流川歴史館およびアイヌ文化博物館を見学した。午前中の雨天などにより時間が多少おしていたため、40分程度の見学となったが、平取町教育委員会の森岡健治氏から的確な説明を受け、短い見学時間ではあったが有効に見学することが出来た。沙流川歴史館では、考古資料が展示され、最近報告書が刊行されたばかりの最新の資料が展示されているほか、3Dを駆使した映像展示が見学者の目を引いた。アイヌ文化博物館では、アイヌの民具資料が見学でき、大変興味深い展示内容であった。見学後、敷地内にあるおみやげ屋さんで、旅の思い出を買い求める参加者も見られた。
 最後に、二風谷ダムに隣接し、発掘調査されたユオイチャシ跡が整備され、見学できる状態となっていたため、森岡さんの案内でチャシ跡を見学することが出来た。ユオイチャシ跡は壕が復元整備され、通行できるよう渡り橋が一本架けられていた。見学者は、チャシ跡を渡って二風谷ダムの方へと進み、チャシ跡の壕の深さやダムの大きさに驚きの表情を示していた。
 今回は、天候は味方しませんでしたが、内容的には多岐に渡るもので、大変充実した見学会であったものと思っております。また、遺跡見学会の実施にあたり、様々な面でご尽力いただきました(財)北海道埋蔵文化財センター、恵庭市教育委員会、千歳市教育委員会、平取町教育委員会には厚く御礼申し上げます。
 次年度以降もこの企画は続く予定ですので、遺跡見学会に関するご意見・ご要望などありましたら実行委員にお知らせください。
                                  見学会担当(松谷・吉田)

編集委員会からのお知らせ
『北海道考古学』第37輯の「原稿募集」について
 次号会誌第37輯の特集テーマを「北海道旧石器時代について」(仮題)といたします。このテーマは本年度研究大会テーマと呼応したものです。研究発表者による論文の他,会員の方々からの本テーマに関する論文投稿をお待ちしております。また,「一般論文」の原稿募集も昨年通りに行います。
 *投稿規定の詳細は『北海道考古学会だより』第58号(1997.11.15刊)をご覧下さい。
*締め切り 2001年1月31日までに編集委員会事務局に到着したものを掲載対象とします。なお、投稿を予定している方は、予めその旨をご一報いただけますと、編集の都合上、大変助かります。ご協力願います。
 *投稿原稿は、正本の他に写し1部(図版・表を含む)を添えて下さい。

   (原稿送付先)編集委員会事務局
〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西7丁目 北海道大学大学院文学研究科
北方文化論講座 小杉研究室気付              会誌担当(林・小杉)

新入会員・住所変更会員のお知らせ(略)

北海道考古学会企画遺跡めぐりツアー中止のお知らせ
 前回のだよりでお知らせしました宿泊を含めた大型の遺跡めぐりツアーですが、観光シーズンを外して出来るだけ廉価で提供できるよう調整していることは前回のだよりでお知らせしたとおりです。しかし,日程の調整にまだ時間がかかり秋口に実施するのは厳しい状況との名鉄観光からの回答を受けまして,今年度中の実施は相当難しい状況となったため,9月2日に開催した委員会において,今年度の実施を見送ることに決定いたしました。
 ご案内を心待ちにされていた会員の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしましたことを深くお詫び申し上げます。なお,本企画については,次年度実施の方向で検討していきますので,計画が具体化しましたら出来るだけ早めに,会員の皆様にお知らせいたします。
北海道考古学会定例研究会からのお知らせ
 去る平成12年10月14日(土)午後5時から、札幌学院大学A棟4階会議室におきまして、北海道大学の高倉純会員より、『黒曜石のフラクチャーウイング』について,札幌市埋蔵文化財センターの出穂雅実会員より,『下川町ルベA遺跡出土の石器』について研究発表が行われた。詳細は次号だよりにて報告いたします。
 また,11月には大変豪華な研究会が開催されることとなっております。旧石器を研究される方々には,お聞き逃しの無いようおすすめいたします。なお,今回の研究会の通訳のために,京都から山中一郎教授がいらっしゃいます。皆様奮ってご参加いただきますようお願い申し上げます。
 11月予定 平成12年11月4日(土)17:00~ 札幌学院大学A館
  マリールイーズ・イニザン(Marie Louise INIZAN)博士
      フランス国立科学研究所研究指導部長
      演題『押圧細石刃剥離;技術と方法その考案と伝播』
      通訳 京都大学文学部 山中一郎教授
      ※都合により日程・内容等が変更する場合がございます。
 北海道考古学会定例研究会では発表者を募集しております。発表希望の会員の方おりましたら事務局までお問い合わせ下さい。あわせて,来年度の研究大会の開催地についても検討しております。地域における普及啓蒙活動の一助になれば幸いと,委員一同地方開催の心構えは出来ております。開催地の要望や研究大会テーマについて個人的なご意見でも結構でございますので、ご遠慮なく北海道考古学会事務局までご一報いただけますようお待ち申し上げております。          研究会担当 (田口・手塚・深澤・藤井)
北海道開拓記念館 第50回特別展のお知らせ
 北海道開拓記念館では、第50回特別展「先史文化と木の利用 遺跡からのメッセージ」が開催されております。北海道のみならず全国の遺跡に目を向けておりますので,道内ではなかなか見ることの出来ない本州の資料が多数展示されているほか,道内の資料も最新の出土資料が展示されております。また,時代的にも旧石器時代から近世まで網羅されておりますので,大変盛り沢山な展示内容となっております。11月5日まで公開されておりますので,まだご覧なってない会員の方いらっしゃいましたら,是非足をお運び下さい。
 
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